大判例

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盛岡地方裁判所 平成9年(わ)120号

本籍ならびに住居

岩手県遠野市青笹町青笹第七地割三八番地一

会社役員

菊地長春

昭和二〇年一月七日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官濱克彦出席の上審理して、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、岩手県遠野市青笹町青笹第七地割三八番地一において、農業及び「菊定農林」の名称で林業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、林業収入の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  平成四年分の実際総所得金額が四六、二三五、八五五円であったにもかかわらず、平成五年二月二四日、岩手県釜石市小佐野町三丁目八番二四号所在の所轄釜石税務署において、同税務署長に対し、同四年分の総所得金額が一二、四〇五、五〇九円で、これに対する所得税額が二、二六七、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一八、一九六、〇〇〇円と右申告税額との差額一五、九二八、八〇〇円を免れ

第二  平成五年分の実際総所得金額が七六、六七三、七八三円であったにもかかわらず、平成六年三月一〇日、前記釜石税務署において、同税務署長に対し、同五年分の総所得金額が一一、七五四、六五四円で、これに対する所得税額が一、九八八、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額三三、三四五、〇〇〇円と右申告税額との差額三一、三五六、九〇〇円を免れ

第三  平成六年分の実際総所得金額が五一、一五〇、一五二円であったにもかかわらず、平成七年三月一五日、前記釜石税務署において、同税務署長に対し、同六年分の総所得金額が一五、一七四、一六六円で、これに対する所得税額が二、七二二、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一八、六八〇、五〇〇円と右申告税額との差額一五、九五八、三〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示の全事実につき

一  被告人の

(1)  当公判廷における供述

(2)  検察官に対する各供述調書

(3)  大蔵事務官に対する平成八年三月二八日付、同年六月一三日付(但し、一一枚つづりのもの)及び同年一一月七日付の各供述調書

一  菊地定光の検察官及び大蔵事務官(三通)に対する各供述調書

一  菊地光子の検察官に対する供述調書

一  検察事務官作成の電話聴取書

一  大蔵事務官作成の

(1)  収入金額(犯則所得)調査書

(2)  給料賃金(犯則所得)調査書

(3)  租税公課調査書

(4)  旅費交通費調査書

(5)  接待交際費調査書

(6)  修繕費(犯則所得)調査書

(7)  消耗品費(犯則所得)調査書

(8)  福利厚生費調査書

(9)  事務用品費(犯則所得)調査書

(10)  雑費調査書

(11)  専従者給与調査書

(12)  専従者控除調査書

(13)  貸倒引当金繰入額調査書

(14)  青色申告特別控除額調査書

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検察官請求証拠番号甲一五番のもの)

一  押収してある所得税確定申告書(平成四年)及び収支内訳書(平成四年)(平成九年押三二号の1及び4)

判示第二の事実につき

一  被告人の大蔵事務官に対する平成八年六月一二日付及び同月一三日付(但し、三枚つづりのもの)の各供述調書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(前同番号甲一六番のもの)

一  所得税確定申告書(平成五年)及び収支内訳書(平成五年)(平成九年押第三二号の2及び5)

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(前同番号甲一七番のもの)

一  押収してある所得税確定申告書(平成六年)及び所得税青色申告決算書(平成九年押第三二号の3及び6)

(法令の適用)

被告人の判示の各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該るが、右いずれの罪についても懲役、罰金の両刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により最も犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑については情状により所得税法二三八条二項、刑法四八条二項により各免がれた所得税の額を合算した金額の範囲内で、被告人を懲役一年及び罰金一五〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状(不正の態様として収入除外と仮空経費の計上により三年間で六三二四万円余をほ脱し、そのほ脱率も約九割と高いもので悪質な脱税であることは争いようもないが、業種としては社会的に有用な正業であること、ほ脱の動機においても婿の立場で養父の家業を継承した被告人が、養父時代の因習に縛られたまま事業を拡大し、それに伴い脱税規模も拡大してきたと見られる事案であって同情の余地があること、ほ脱所得の使途も専ら将来の経営危機に備える健全貯蓄と見られるものであったこと、罪証隠滅や不当な抗弁を構えるなどのことなく実情を正直に告白していること、事の発覚をむしろ好転機として事業を法人化することによって経理の明朗化を実現し、再犯の懼れは全くないこと、前記蓄財を取崩して既にほ脱税額はもとより、重加算税、延滞税等に至る迄完済して恭順の意を顕わしていること、本件脱税に関与した一点を除けば、被告人は模範的な社会人、家庭人であると認められること等を考慮した。)により同法二五条一項を適用して右懲役刑についてはこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとして、主文のとおり判決する。

平成一〇年三月一三日

(裁判官 須藤浩克)

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